経緯と今後の方針

研究の経緯と成果

1)第1期AGS(1996-2000年)

第1期には50以上のプロジェクトが実行され、パートナー大学の150名以上の研究者が学術研究に参画した。
具体的な研究プロジェクトとしては、例えば以下のような研究が挙げられる。

エネルギー問題では中国山東省の石炭火力発電が環境や健康に与える影響評価、将来の電力需要予測、経済性予測、全リスクアセスメントをAGSパートナー大学、中国の大学、山東省政府機関、電力やオートメーション技術で世界的な企業であるABB社と共同して取り組んだ(China Energy Technology Program/CETP)。
中国の主要燃料である石炭のより効率的な利用促進と従業員の健康と環境へのインパクトを少なくする研究を実施している。環境への負荷の低い脱硫技術の開発やそれらの技術オプションを社会で採用・普及させることに影響を及ぼす様々な政治的、経済的、制度的条件を明確にした解決策を検討した。

東京都の温室効果ガスの半減化計画(Tokyo Half Project/THP)として、電力部門、移動(Mobilityで主に自動車)部門、建築部門の各技術オプションで削減策を検討した。後にMITで開発したネットワークシステム(DOME/Distributed Object-based Modeling Environment)によりこれらのデータを統合し世界のどの都市の評価にも利用できるようになった。

バングラデッシュでは、飲料水である地下水中に自然に含まれていた砒素により、砒素中毒が多発するようになった。飲料水からの砒素の除去方法や飲料水および農業用水として水を持続的に利用できるシステムを検討するとともに、砒素が地下水中に溶出してくる仕組みの解明に努めた。

2)第2期AGS(2001-2005)

第2期から各大学で活動資金を集めて研究・教育及び運営費にあてることになった。そのため高額の助成基金でAGSを支援し、IAB(国際諮問役員会)メンバーとしてAGS運営に係わる企業を募ることとした。また、第2期からスウェーデンのチャルマーズ工科大学(Chalmers University of Technology)が参画して4大学の活動となった。
研究では、第1期から継続された研究プロジェクトの成果を社会に展開する時期になった。社会への展開の一端を紹介すると:

  1. 第1期から継続してきたCETPは研究が成果をおさめ、山東省に政策提案して実際に活用されている。
  2. メキシコシティーの大気汚染を改善するプロジェクトでは、ノーベル賞受賞者であるマリオ・モリノMIT教授(現在はカリフォルニア大学サンディエゴ校教授)を中心として、ETHや東京大学の教員・研究者も参画し、研究成果をもとに政策提言を行った。
  3. THPについては各セクターの成果が蓄積され、2004年には待望のDOMEも完成して、いよいよ次のステップへの展開が期待されている。
  4. バングラデシュの飲料用の地下水に含有される砒素の健康への影響調査と解決策への取組みも成果を収め、同じ砒素汚染の問題を有するネパールへも研究が拡大されている。
  5. 築分野では中国などで活動を推進し、地域の実情に沿った伝統的な技術も利用した持続可能な技術の開発を行った。
  6. 移動手段(Mobility)についても、バンコクや仙台などでのケーススタディーを通じて解決策を提案している。

教育の経緯と成果

AGSの中に環境教育グループが形成されたのが1999年のことであり、その翌年の2000年夏にはこのグループの活動として、環境教育実践の場であるY.E.S.(2002年までYouth Environmental Summit、2003年からはYouth Encounter on Sustainability)を開始した。Y.E.S.は、世界各国の大学生・大学院生30-40人が文化・ことば・専門領域の壁を越えて2週間にわたり、Sustainability について講義を聴き、見学をし、議論し、そして発表し合うというプログラムである。東京大学も第1回以来Y.E.S.の計画・運営・実施に深く関わってきた。日本からは毎回5-7名の学生が参加している。

一方、AGSの全体の枠組みから少し離れて、アジアを見つめる環境教育の試みであるIPoS(Intensive Program on Sustainability)を、アジア工科大学院(AIT)との協力のもとタイにおいて2004年から開始した。Sustainabilityというプログラム全体の大きな傘のもと、アジアに関連の深い個別テーマを選び、アジアの地域性を強く意識したプログラムを進めている。

一方、AGSと関連した学生間の活動として、World Student Community for Sustainable Development/WSC-SD)を2001年に設立して活動を展開している。東京大学の支部UT-SC(University of Tokyo-Student Community)も結成され、分科会を設立して活発に活動している。

今後の計画

第2期AGSの各大学で活動資金を集めるという戦略は世界経済の後退時期の影響もあり十分な成果をあげるまでにはいたらなかった。AGSとして第3期(2006-2010)を発展的に継続実施することになり、戦略の検討を行った。
その結果、AGSは4大学間の緩やかな世界的ネットワーク(Federal Model) とし、4大学間では大規模プロジェクト(Flagship Project)を中心に共同研究を推進し、各大学では地域の活動にこれまでより力を入れることになった。

1) Flagship Project

移行時期である2005年からエネルギー・パスウェイ・フラッグシッププロジェクト(Energy Pathway Flagship Project)を開始した。このFlagship Projectでは,

  1. 近未来を目標とした持続可能なエネルギーの研究、例えば、持続可能な移動手段、将来の燃料と供給原料(バイオ燃料、水素の製造、貯蔵、輸送など)、クリーンな電力供給を研究課題としている。
  2. 持続的発展を目指し、1.の研究成果を盛り込んだカリキュラムの開発やケーススタディーを教育用の材料として作成し、学部学生、大学院学生や、政府、企業、メディアの政策責任者、一般の人を対象にした教育プランを設定した。

2006年には新たに食糧と水・フラッグシッププロジェクト(Food and Water Flagship Project)の開始へ向けて準備を進めている。

2)地域の活動

東京大学はアジア、特に東アジア(東南アジアを含む)の大学や研究機関とのネットワークを構築してASA(Alliance for Sustainable Asia)、アジアの持続的発展を目指す研究・教育活動に挑戦する方針である。

教育については、IPoSは東大AGSが主体となった活動として、またY.E.S.はETHのリーダーシップのもとに今後も開催していく。