アジア農村の長期変動研究とインド農村開発

平成19年度 成果一覧

水島 司(東京大学大学院人文社会系研究科 教授)
梅崎 昌裕(東京大学大学院医学系研究科 准教授)
川島 博之(東京大学大学院農学生命科学研究科  准教授)
加納 啓良(東京大学東洋文化研究所 教授)

要旨

インドの東南部では、灌漑地域、乾燥地域、中間地域という三つの異なる生産環境が近接した空間に存在してきた。米作に必要な雨量が絶対的に不足している状況の中で、同地域は、これまで三つのリソースを開発してきた。荒蕪地開発、地下水開発、技術開発である。問題は、こうした開発がいずれも限界に直面してしまっているという点である。過剰開発は、数年に一度の凶作をインド各地にもたらしており、加えて、省水型の農業から資源収奪型の農業への移行が、単に農業生産だけではなく、村落の社会関係にも圧力を加えつつある。いわゆるカースト制によって維持されてきた村落の共同性が消えたことや、個人の利害関係が他に最優先されるという事態は、持続型の生産システムを継続することを困難にしている。また、都市や海外への移民の重要性が増し、それが村人の将来の生存戦略を左右するようになっている。田畑や家々がインド農村部で放棄されるという光景が珍しくないという状況が近いうちに現実となる。

キーワード

南東インド、農村開発、長期変動、村のまとまり、移民