アジア農村地域における飲料水源確保のための持続可能な対策

平成16年度 成果一覧

渡辺 知保(東京大学 大学院医学系研究科 人類生態学分野 教授)
吉永 淳(東京大学 大学院新領域研究科 環境学専攻 助教授)
関山 牧子(東京大学 サステイナビリティ学連携研究機構 特任助手)

要旨

当該期間においては、インドネシア・西ジャワのチタルム川流域における調査を2004年12月ならびに2005年3月の2回実施したが、本研究の申請直前2003年10月に実施足した調査についても、実際の分析・測定と結果解析は当該期間内に行われており、これらの結果をあわせて報告する。これらの調査では、チタルム中流~上流に位置する3集落(農村2、養殖業村1)を訪れ、各集落から小学校2校ずつを選び、低学年学童全員を対象とする調査を実施した。すなわち、対象者より尿を採取するとともに、微量採血を行い、栄養状態の指標としてヘモグロビン濃度を、また、有機りん系農薬の曝露指標として血中コリンエステラーゼ(ChE)活性を測定した。04年10月の対象者は初回調査の対象者からおよそ半数を選び、学童?母親のペアで尿を採取した。
初年度の結果から、選んだ3つの集落間に有機リン系農薬の尿中排泄の有意差を認めた。最も農業従事者が少ない集落において、最も排泄レベルが高く、ChE活性も最低であったことから、この集落において、農作業に直接関連のない形での農薬曝露が起こっていることが推察された。家庭における農薬の使用・保管の状況に問題がある可能性が示唆されていたことから、各家庭に農薬の使用についての聞き取り調査をおこなった。 聞き取り調査の結果から、当該地域で使用されている農薬には国際基準において、中程度以上の毒性をもつものが高頻度に含まれていることが判明した。また、対象者の半数近くは、農薬を屋内に保管しており、保管場所を介した曝露が起きている可能性も示唆された。使用時においても、防護対策はしばしば不十分であることが明らかとなった。母子間の汚染程度の相関については、それほど顕著なものが見られなかったが、母子ともに高値を示す世帯が複数あり、世帯に起因する曝露の存在がうかがわれた。当該地域における農薬使用に関しては、環境教育・健康教育・安全教育といった、教育面からのアプローチも必要であることが示唆された。
バングラデシュについては、平成16年度夏に渡航を予定していたが、渡航直前に調査地が洪水に見舞われて延期となった。以後、一時的に治安の問題が出てきたこともあり、結局平成16年度中の調査は断念せざるを得なかった。

キーワード

西ジャワ、農業、農薬、重金属、健康影響、次世代影響、小児