中国の巨大都市における農業の食糧生産・環境保全機能に注目した都市農村循環社会の形成-天津市における事例研究-

平成18年度 成果一覧

武内 和彦(東京大学大学院 農学生命科学研究科 教授)
森田 茂紀(東京大学大学院 農学生命科学研究科 教授)
横山 伸也(東京大学大学院 農学生命科学研究科 教授)
木南 章(東京大学大学院 農学生命科学研究科 教授)
福士 謙介(東京大学 サステイナビリティ学連携研究機構 准教授)
高野 哲夫(東京大学 アジア生物資源環境研究センター 准教授)
酒井 裕司(東京大学大学院 工学系研究科 助教)
原 祐二(東京大学 サステイナビリティ学連携研究機構 特任助教)

要旨

本プロジェクトは,「東京大学と天津市人民政府との科学技術及び人材交流に関する覚書」に基づいて進められており,中国天津市を事例として,都市農村融合により持続可能なバイオマス循環社会を形成することを最終的な目標としている。昨年度までの東京大学-天津市交流実績をふまえ,2006年度においては,具体的な各研究ユニット,すなわち,(1) 都市農村土地利用混在の現場実態および現状の空間計画の把握,(2) 米の品質と食味の向上を通じた生産面からの農業基盤強化,(3) 塩害土壌改良を通じた環境面からの農村基盤修復,(4) 重金属汚染土壌修復を通じた環境面からの農村基盤修復の4課題について,現地調査・研究を進めた。その結果,各々次のような知見を得た。(1) 都市的土地利用の拡大と共に近郊農地利用の多様化が見られるものの,青果は天津市外への搬出・販売されるケースが多く,地産地消に向けて必ずしも域内循環率が上昇しているわけではないことが把握された。(2) 急速な経済成長や都市と農村の格差の拡大に伴い,おいしい米に対するニーズが高まっていることが確認されるとともに,中国における水稲の品質・食味に関する研究がすでに一定レベルに達していることも明らかとなった。(3) 天津市では,沿岸部などを中心にNaCl含有量の多い土壌が存在することを調査により確認し,脱硫石膏のみならず植物による除塩手法を取り入れた土壌改良手法が必要であることを提案し,まず,脱硫石膏,建築廃石膏の施用による塩類化土壌改良において農産物の増収は確認できた。更に,天津市での経済性,環境影響,健康影響,土壌改良効果を評価可能な環境改善プロセス評価基盤のための知見を得ることが出来た。(4) とくに水銀とカドミウムは日本の大規模固定発生源周辺のレベルと同等であり,銅,亜鉛,鉛とともに広域・共通の汚染源として灌漑用水の汚染が寄与すると考えられた。

キーワード

天津市、土地利用、都市農村融合、バイオマス