中国大都市圏における炭素性エアロゾルの環境影響の研究

平成18年度 成果一覧

近藤 豊(東京大学先端科学技術研究センター 教授)

要旨

アジアの広域でのエアロゾルの分布は、アジア大陸での人為起源エアロゾルの生成、生成源からの輸送、輸送途中での消失過程によって決まる。アジア大陸上での一次エアロゾルの発生量分布は、これまで積み上げ方式による推定はあるものの、その推定誤差は大きい。また二次エアロゾルに対する推定誤差はさらに大きい。ここでは、アジアにおけるエアロゾルの主要部分を占めると考えられる炭素性エアロゾル(元素状炭素(elemental carbon; EC)、有機炭素(organic carbon; OC))の濃度を関連する一次放出気体であるCO、CO2と同時に測定し、それらの成分の濃度レベルとその変動、放出比を明らかにする。このことにより、EC、 OCの発生源での放出量をより高精度で推定することが可能となり、アジアにおけるエアロゾル分布の実態をより正確に把握できる。本研究では、まずアジアの代表的なメガシティである北京市内において長期にEC、OC、CO、CO2を高精度で連続観測を行うための観測システムを開発・製作した。これを、2005年10-11月に北京大学構内に設置し、2005年11月-2006年1月、2006年3月-5月、8月-9月、10月、2007年3月と、これらの測定器による集中観測を各季節で実施した。また2006年の8月には北京の南50 kmの地点でも同様な観測を実施した。一般的にEC、OC濃度は風速とともに減少する傾向にある。OC、COの平均濃度は冬季、特に夜間に最大になる。これは、冬季の暖房などによるOC, COの放出があることに加え、境界層高度が低いことも関与している可能性がある。一方、EC濃度の季節変化は小さい。ECの平均濃度は、6-9μg/m3であり、東京の約3倍である。またEC-CO-CO2の変動はお互いに高い相関をもっている。EC-CO相関の傾き(ΔEC/ΔCO)は夜間に増加する日変化を示す。これは夜間に交通量が増す大型ディーゼル車からの放出による可能性がある。ΔCO/ΔCO2比は13-47ppnv/ppmvであり、Streetsの推定値60 ppbv/ppmvよりも小さい。このことから、COの放出量は過大評価されている可能性がある。今後、EC-CO2, OC-CO2比などをこれまでの推定値と詳細に比較する。

キーワード

炭素性エアロゾル、元素状炭素、有機エアロゾル、一酸化炭素、中国