地球持続のための新素材イノベーションの可能性 光触媒のケース

平成15年度 成果一覧

馬場靖憲(東京大学 先端科学技術研究センター教授)
鎗目雅(東京大学先端科学技術研究センター助手)

要旨

日本において大学発の科学技術の社会還元は遅れている。そのなかで、機能性材料に属する光触媒分野においては、産学連携から新市場が立ち上がり、地球環境問題の解決に関する社会的な試みが進展中である。本研究は、同分野において主導的な貢献をした藤嶋・橋本研究室に注目し、どのように、産学連携が社会貢献を可能にしたのか、その経緯と理由を明らかにする。産学連携からの市場化が成功する場合、科学と市場が市場性を持つ製品スペックの落とし込みという形で結合されることが重要である。大学の研究者は科学的理解に基づき技術の利用方法に関して積極的に提案し、企業はユーザーに対する知見を活用して科学技術の可能性を市場性のある製品へ落とし込む。大学研究者がユーザーニーズに極めて敏感に反応する一方、企業はその活動において基礎研究に踏み込み共著論文を発表するなど、研究開発活動に産学間の浸透現象が発生している。機能性材料分野におけるイノベーションに産学連携が貢献するためには、大学の研究者と企業の双方が極めて厳しい条件を満たす必要があり、本論文の分析結果は同分野が地球持続へ向けて産学連携を成功させるための大学研究室運営、企業戦略、そして関連政策の策定に含意を提供する。

キーワード

光触媒、産学連携、大学研究者、イノベーションモデル