太陽電池大量導入が都市ヒートアイランド現象に及ぼす影響

平成14年度 成果一覧

小宮山宏(東京大学 大学院工学系研究科化学システム工学専攻 教授)
花木啓祐(東京大学 大学院工学系研究科都市工学専攻 教授)
山地憲治(東京大学 大学院工学系研究科電気工学専攻 教授)
柳沢幸雄(東京大学 大学院新領域創成科学研究科教授)
高橋 宏(東京大学 大学院工学系研究科化学システム工学専攻 地球環境工学寄付講座 客員教授)
原田 昇(東京大学 大学院新領域創成科学研究科教授)
伊香賀俊治(慶応大学 理工学部 訪問教授)
山田興一(信州大学 繊維学部精密素材工学科 教授)
松尾友矩(東洋大学 工学部 教授)
玉井信行(金沢大学 工学部 教授)
石谷 久(慶應義塾大学 政策メディア研究科 教授)

要旨

都市域で頻発するヒートアイランド現象には、緑地の減少による顕熱輸送量の増加や、ビル壁体の蓄熱、自動車や冷房室外機からの人工排熱などが関与していることが指摘されている。従ってヒートアイランド現象の理解や対策評価を行うためには、建物の形状や影の効果、排熱排出位置などの評価が可能な物理過程が組み込まれた数値モデルを利用することが一つの有効手段である。本稿では、夏季の冷房負荷がヒートアイランド現象に及ぼす影響について解析を行った。太陽電池発電システムを大都市に大量導入した場合、ヒートアイランド現象に及ぼす影響は正負両面ある。太陽電池パネルをビル屋上に設置する場合、太陽電池は屋上壁(場合によっては側壁)から離されて設置されるため、日射遮蔽効果によって建物内部への伝導熱が減り、場合によっては冷房負荷が半減できることが示唆されている。都市部に大規模に太陽電池を導入した場合にはパネルの設置により冷房負荷削減に伴う排熱削減が起こる可能性があり、さらなる省エネルギー効果も期待される。しかし、逆にパネル設置による表面熱収支の変化により顕熱輸送が増加した場合には、都市気温が上昇して、冷房エネルギー消費が増えることも考えられる。都市部において夏季最高気温が1℃上昇した場合、電気、都市ガスなどの二次エネルギーベースで約6%のエネルギ-消費増が起きているためである。一方、太陽電池電力により冷房電力を賄えば、都市にもともと注がれていた光エネルギーを電気エネルギーに変換して冷房するわけで冷房排熱は都市に対する新たな熱負荷にはならない。系統電力による冷房は気温上昇による冷房電力の増大が冷房排熱の増大をもたらし、それが都市の総熱量の増大となり、それがさらなる気温上昇をもたらし、その結果さらなる冷房電力の増大をもたらすという悪循環現象が指摘されている。都市内に設置された太陽電池電力による冷房は原理的こうした悪循環現象を抑制する可能性がある。但し、この検証には、都市に設置しうる太陽電池の総量、その太陽電池が発電しうる電力と冷房電力量に対する定量的考察が必要であるが、冷房電力負荷と太陽電池発電量は共に日射強度と強い正の相関があり、太陽電池が大量導入された場合にはヒートアイランド現象の抑止効果はありうる現象である。 なお、太陽電池以外の分散型電源は、ヒートアイランド現象を助長することが懸念され、太陽電池がヒートアイランド現象を抑止する可能性があることは太陽電池の一つの利点である。

キーワード

都市熱収支、ヒートアイランド、太陽電池