子供の視点で見た農業と環境-農業の多面的機能とカンボジア・タイの子供の絵から読み取れること-

平成21年度 成果一覧

鴨下顕彦 (東京大学アジア生物資源環境研究センター准教授)
Nguyen Yen(東京大学アジア生物資源環境研究センター博士課程)
荒木祐二 (東京大学アジア生物資源環境研究センター特任助教)

要旨

カンボジア、タイの農業の多面的機能のうち、水田生態系の水と植物の利用、水田・農村景観に関して、アンケート(カンボジア 3 つの異なる水田生態系に位置する 9 村)と子どもの絵画(カンボジアの 農村と街の小中学生 507 名およびタイの大学生 236 名)により評価した。カンボジアの調査 9 村では、水田生態系の水の用途が多様であり(子供の水泳、人や家畜の飲用、灌漑、魚とり、道具洗い、小舟での移動)、水田から様々な植物を利用しており(平均 12 種類)、深水水田地帯では利用種類が多いこと、 また、収穫期などの水田景観への美的評価が確認された。カンボジアの子どもの絵画の、「好きな場所」に多い対象は、自然(田畑や果樹も含む)や身近な場所(家、学校)、「嫌いな場所」に多い対象は、木の伐採(共通)、地雷と農薬散布(農村小学校のみ)、家庭内暴力、酒・賭博、環境汚染、病気・HIV、狩猟、旱魃(都市の小中学校のみ)などであった。「今」の水田景観に多い対象は、太陽、山、木、果樹、動物などの自然、「将来」の景観に多い対象は、豪華な家、建物、道路、車であったが、タイの大学生は、 水田面積の縮小、木の減少、農作業の機械化を将来像に描いた。本研究は、カンボジアとタイの農業の 多面的機能の幾つかの要素が、ローカルな農村レベルでは重要であることと、子どもの視点からの水田・ 農村景観像を示し、今後途上国でのサステイナブル・アグリカルチャーの実現のための議論に資するこ とが期待される。

キーワード

カンボジア、景観、子供の絵、水田、タイ、農業の多面的機能

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