熱帯アジアの持続可能な稲作システムの構築 ―アジア・カンボジア・コンピンプイの3スケールアプローチ―

平成20年度 成果一覧

鴨下顕彦(東京大学アジア生物資源環境研究センター)
山岸順子(東京大学大学院農学生命科学研究科)
林 怜史(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター)
黒倉 寿(東京大学大学院農学生命科学研究科)
堀 美菜(東京大学大学院農学生命科学研究科)
池本 幸生(東京大学東洋文化研究所)
小島 克己(東京大学アジア生物資源環境研究センター)
則定 真利子(東京大学アジア生物資源環境研究センター)
山ノ下 卓(東京大学アジア生物資源環境研究センター)
桜木 和代(日本・カンボジア法律家の会)

要旨

熱帯アジア(グローバル)と、その中の一小国であるカンボジア(国家)と、カンボジア北西部のコンピンプイ灌漑修復地(ローカル)な3つのスケールでの持続可能な稲作の構築のために、文献・統計調査とカンボジア稲作改善プロジェクトのフィールド調査により、得られた研究成果の一部をまとめた(成果全体は巻末発表文献、鴨下2009a,bを参照)。増加を続ける人口を扶養するための熱帯アジアの稲作(面積約1億ha)の課題を、①経済成長と産業構造の変化、②米の貿易の増加、③地球環境問題(温暖化、生物多様性、水資源)、④新技術革新(バイオテクノロジーなど)、⑤農村開発と貧困削減という5点にまとめた。内戦からの復興を遂げつつあり、天水稲作が大半を占めているカンボジアの稲作(面積約200万ha)の課題を、①灌漑化と市場用米の増産、②天水小規模農家のエンパワーメント、③水の有効利用、④産業構造の変化への対応、⑤農業研究開発普及体制の強化という5点にまとめた。カンボジア北西部のコンピンプイ灌漑修復地(面積約4000ha)では、フィールド調査により、①伝統的直播栽培、②稲作近代化と増産の実態を明らかにし、ステークホルダー解析とサステイナビリティ・マトリックスにより、持続可能な農業開発の可能性を検討した。持続可能な稲作の構築のためには、熱帯アジアというレベルでは、緑の革命のような技術革新とサステイナビリティの思想が、カンボジアというレベルでは統治失敗の回避と適切な政策の実施が、コンピンプイという地域レベルでは、ステークホルダーによる議論と選択が重要であり、それぞれのスケールでサステイナビリティの具体化を推進することが重要であることを述べる。

キーワード

稲作、カンボジア、技術革新、サステイナビリティ、スケール、ステークホルダー、政策

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